2010年05月27日

SS(シー・シェパード)元船長 初公判 その5 船内で拘束中に“日本語授業”?とDVD 法廷内暑くて?被告の頬紅潮


《検察官が、事件当時、調査捕鯨船団の監視船「第2昭南丸」に乗船していた男性船員が酪酸入りの瓶を投擲(とうてき)された際の状況について説明している。環境保護を標榜(ひょうぼう)する米団体「シー・シェパード(SS)」の抗議船「アディ・ギル号」元船長、ピーター・ジェームス・ベスーン被告(45)は、ゴムボートで第2昭南丸に接近した上で、ランチャーを使って酪酸入りの瓶を発射。これに対して第2昭南丸の船員らは、圧縮空気で水を発射する「インパルス銃」を使って“応戦”していたという》
《検察官が尋問を続ける》
検察官「インパルス銃は、第2昭南丸から見て真横の方向に構えていたんですね?」
証 人「はい。船は走っているので、船首から船尾に向かって風が吹きます。だから、インパルス銃を撃ったとしても前(船首側)に流れることはありません」
《ベスーン被告は、「船員のけがの原因はインパルス銃から発射された水に含まれる成分によるものだ」として傷害罪を否認している。この証言は、傷害罪の成否を判断する上で重要な材料となりそうだ》
検察官「被告の処罰について何か言いたいことはありますか」
証 人「僕たちは酪酸をかけられて、すごく痛い思いをして、すごく不愉快な思いをしました。(仕事を中断したため)船員にも迷惑をかけました。やったことはやったこととして、ちゃんと処罰してもらいたいです」
《被告人席に座るベスーン被告は、証人をじっと見つめたままで表情を変えない》
《ここで、約10分間の休憩に入った。休憩終了前に多和田隆史裁判長が「法廷内はかなり暑いので、上着を脱いでいただいていいですよ。被告もいいですよ」と告げると、ベスーン被告が上着を脱いだ。だいぶ暑かったのか、ほおが紅潮している》
 《審理が再開され、男性弁護人が質問に立った》
弁護人「防護ヘルメットは会社から支給されたものですね?」
証 人「はい」
弁護人「確認ですが、この日あなたは上唇までしかフェースガードを下ろしていなかったんですね?」
証 人「はい」
弁護人「あごのあたりまでは下がるんですよね?」
証 人「はい」
弁護人「この日はあごまで下げる必要を感じなかったのですか」
証 人「いつもそのくらいまでしか下げていません」
弁護人「インパルス銃は真横に向けて発射したんですね?」
証 人「はい」
弁護人「それはベスーンさんがランチャーから何か発射した直後ですね?」
証 人「はい」
弁護人「ランチャーがあたったところは見ていないですか」
証 人「はい。当たった場所までは見ていません」
弁護人「でも、1〜2秒後にヒリヒリ感を感じたんですよね? 初めて痛みを感じたときは何をしていましたか」
証 人「よく覚えていないですが、立ち止まったりしていたのではないかと…」
弁護人「インパルス銃を撃ったのでは?」
証 人「あ、失礼しました。直後に撃ちました」
弁護人「痛みを感じたのは、まさしくインパルス銃を撃ったときではないですか」
証 人「僕らはちょっと後です」
 《ここで通訳の女性が「(聞いているのは)痛みのことですよね? ちょっと食い違っているんですが…」と怪訝(けげん)そうな表情で質問した。弁護人が改めて同じ質問をすると、証人は「はい」と答えた。ベスーン被告は被告人席の背もたれに右腕をかけ、リラックスした様子だ》
弁護人「インパルス銃を撃ったのは、SSの人が乗り込んで来ないようにですよね?」
証 人「元々はそういうことです」
弁護人「ずばり聞きますが、あなたはこの日、インパルス銃の中身を体に浴びたことはないですか」
証 人「撃ったやつは、少しは自分にかかります」
 弁護人「痛みを感じて40分間シャワールームにいたということですが、その後はどうしましたか」
証 人「40分ぐらい洗ったりしていたら、最初よりヒリヒリ感が抜けてきたので、片づけに入りました」
弁護人「片づけとは?」
証 人「酪酸がかかったところの液体を流したりしていました」
弁護人「その後は?」
証 人「当直に入りました」
弁護人「当直は何時までですか」
証 人「その日、僕は夜中のミッドナイトまででした」
 《ミッドナイトとは、午前0時を指すようだ》
弁護人「よく眠れましたね?」
証 人「その日は朝からずっと(勤務)だったので、よく眠れました」
 《何点か質問した後、弁護人はベスーン被告の“人となり”も尋ねた》
弁護人「ベスーンさんが(第2昭南丸に)乗り込んだ後、東京港に戻るまで船で一緒でしたね?」
証 人「はい」
弁護人「ベスーンさんの船での様子はどのような感じでしたか」
証 人「乗組員と同じものを食べ、DVDが見たいと言ったらDVDをあげ、普通に生活していました」
弁護人「みなさんと同じ食事をとっていたのですか」
証 人「同じ場所で(食事)していました」
弁護人「職員との会話はありましたか」
証 人「△△監督官(法廷では実名)は、食事が終わってから日本語の練習をしているのを見ています」
 《監督官がベスーン被告に日本語を教えていたようだ》
弁護人「ベスーンさんも喜んで日本語を習っていたんじゃないですか」
証 人「はい」
弁護人「他にベスーンさんに日本語を教えた人はいませんか」
証 人「あと食事に立ち会ったとしたら、□□甲板長(法廷では実名)くらいです」
弁護人「ベスーンさんと捕鯨について語り合った人はいますか」
証 人「そういう人はいなかったと思います」
 《第2昭南丸の船内では比較的、和気藹々(わきあいあい)と過ごしていたようだ。ベスーン被告は、後ろに立つ弁護人と前に座る証人を交互に見ている》

説明にまごつく証人 指さして苛立つ裁判長「もう一度答えて」

弁護人「顔が痛いと感じたとき、上の方から水は降ってきましたか」
証 人「分かりません。波しぶきがあって、あたりは水浸しでした」
弁護人「ランチャーを撃った後、何かが割れる音は聞こえましたか」
証 人「ガラスが割れるような音は聞いていません」
弁護人「顔に痛みを感じた後、船内に入るために上甲板を歩きましたよね?」
証 人「はい」
弁護人「その間に足の裏でガラス片を踏むような感じはありましたか」
証 人「感じませんでした」
 《ここで別の男性弁護士が立ち上がり、質問を続ける》
弁護人「シャワールームに入ったとき、『異臭がすごかった』と言いましたよね?」
証 人「はい」
弁護人「シャワールームには最初に入ったのですか」
証 人「思いだせません」
弁護人「人はいましたか」
証 人「いたような、いなかったような。どちらがどっちとは言えません」
弁護人「(起訴状で顔面を負傷したとされている)乗組員とは一緒に入りましたか。ほかに痛みを訴えた人と3人で同時に入りましたか」
証 人「それはないです。同時には入っていないと思います」
弁護人「シャワールームで顔を洗うように指示がありましたか」
証 人「はい」
弁護人「誰の指示ですか」
証 人「□□甲板長(法廷では実名)でした」
弁護人「シャワールームで声を掛けてきたのですか」
証 人「デッキ上です」
 《弁護人は、酪酸で被害が出たとする証人に当時の経緯を詳しく聞きたいようだ》
弁護人「シャワールームで軟膏(なんこう)を塗りましたか」
証 人「『シャワールームで軟膏を塗った』とは一言も言ったことはないです。船橋(ブリッジ)で塗りました」
弁護人「何という薬ですか」
証 人「最初に塗った軟膏の名前は覚えていません。2回目に塗った軟膏は(調査捕鯨船団の)ほかの船からもらいましたが、その名前は××軟膏(法廷では商品名)です」
 《弁護側は××軟膏をほかの船からもらった経緯について質問を重ねる。証人が説明にまごつき、多和田隆史裁判長がいらだったような表情をしながら証人を指さし、「もう1度答えて」などと促す》
 《証人は第2昭南丸がほかの船に接近してロープを渡し、ロープで袋に入った軟膏を引き寄せたことを説明した。弁護人は質問の内容を変える》
弁護人「日本に帰ってから診察を受けたと言っていましたね?」
証 人「はい」
弁護人「何のためですか?」
証 人「それは…アレです」
 《女性通訳が口を挟む。今回の証人尋問ではよく目にする場面だ》
 通訳「アレって、どういう意味ですか」
証 人「診断してもらうために行きました」
弁護人「そのとき、けがは治っていましたか」
証 人「はい」
弁護人「診断してもらう必要があるんですか」
証 人「体のことですから…」
弁護人「どうやって診断したんですか」
証 人「(医師は)顔の状態と写真を見ました。そのときの状況を伝えました」
 《写真とは何か。やや言葉足らずの感もある証人に多和田裁判長は再び不機嫌になっていく》
裁判長「あなたが写真を持って行ったの?」
証 人「いいえ。検事さんと一緒に行きました」
裁判長「検事と一緒に病院に行き、(被害直後の)写真を見せたわけ?」
証 人「はい」
弁護人「最後の質問です。(酪酸を浴びたときに着ていた)レインコートは処分しましたね?」
証 人「はい。(ほかの乗組員に)『くさいだけだから』と言われました」
弁護人「いつ処分しましたか」
証 人「たぶん2月12日だったと思います」
弁護人「翌日ですね」
証 人「はい」
 《続いて検察側の最終尋問に移る》
検察官「被告がランチャーを撃ったときの状況ですが、インパルス銃を撃ちましたか」
証 人「はい」
検察官「痛みを感じたときと、インパルス銃を撃ったときの前後関係を確認させてください。弁護人の質問に混乱していたようですから。端的に答えてください。どっちが先ですか」
証 人「SSが先に撃ってきました」
検察官「聞きたいのは、痛みを感じたとき、インパルス銃を撃ったときのどちらが先かということです」
証 人「インパルス銃を撃ってから痛みを感じました」
検察官「時間の間隔は?」
証 人「1、2秒ぐらいです」
検察官「当時はどんな靴を履いていましたか」
証 人「長靴です」
検察官「靴底の構造は?」
証 人「ゴムより堅い生地です」
 《検察側の最終尋問が終了した。続いて多和田裁判長の両脇に座る男女の裁判官が証人に尋問していく》
裁判官「2月11日に目のかゆみや痛みを感じてから顔を洗うまで、どれぐらいの時間がありましたか」
証 人「大体5分かかったかどうかぐらいだと思います」
裁判官「その5分というのは、もともといた左舷上甲板から船首に移動して船内のシャワールームに行くまでの時間ですか」
証 人「はい」
裁判官「その後は通常業務に戻ったんですか」
証 人「はい。多少痛みはありましたが、戻らないと行けなかったので戻りました」
 《ベスーン被告は、前屈みになって裁判官をじっと見ている。尋問は、証人が事件当日に装備していたインパルス銃の中身に移った》
裁判官「インパルス銃の中身が自分の顔にかかることもありえますか」
証 人「そうですね。全くかからないってことはないかもしれません」
裁判官「これまでインパルス銃に水以外のものを入れたことはありますか」
証 人「いや、ありません」
裁判官「先ほどシャワーで顔を洗ったと言っていましたが、その水はどこからの水ですか」
証 人「もともと船のタンクがあって、そこから使っていると思います」
裁判官「タンクの水はインパルス銃の水と同じですか」
証 人「船内にはタンクがいろいろあって、どこのタンクの水を使っているかは分かりません」
 《裁判官は、証人らがやけどをした原因について、ベスーン被告の発射した酪酸以外だった可能性があるか確認したかったようだ。続いて酪酸を浴びた直後の状況について質問していく》
裁判官「目や顔の痛みを感じてから船首の方に行って船内に入ったんですよね? 船首に向かう途中で、被害の大きかった男性に近づいたんですよね?」
証 人「はい。うずくまっているところを見つけました」
裁判官「彼に近づくに連れて痛くなったり、痛みが弱まったりしましたか」
証 人「痛くなってきました」
裁判官「ところで、日本に帰ってきてから病院に行ったときに見せた写真は、いつの写真でしたか」
証 人「多分、事件の次の日の写真だと思います」
裁判官「シャワールームから出て現場の片付けをしたと言っていましたが、具体的には何を使ったんですか」
証 人「中和剤と聞いていますが初めて使ったので…。ほかに消火ホースやインパルス銃などを片づけました」
裁判官「酪酸の瓶の片付けはしていないんですか」
証 人「僕自身はしていません」
裁判官「中和剤をまいた範囲は?」
証 人「左舷側の瓶が破裂した辺り一帯です」
 《多和田裁判長と2人の裁判官による尋問はここで終わり、尋問は終了した》
裁判官「長時間おつかれさまでした」
 《裁判長が証人の労をねぎらうと、証人は足早に法廷を後にした》
裁判官「本日の審理はこれで終わります」
 《「分かりました」という意思表示をするかのようにベスーン被告は一度、頷いた。傍聴人が先に退廷する中、ベスーン被告はまっすぐ、検察側の方を見つめていた》
 《次回公判は28日午前10時から、引き続き証人尋問が行われ、起訴状で顔面を負傷したとされている男性乗組員と、母船「日新丸」に乗っていた船医が証言台に立つ予定だ》
=(完)


その1 その2 その3 その4 

28日【SS元船長 第2回公判】その1。SSのリンゴ砲攻撃に竹の棒で応戦?! 負傷した捕鯨船団の乗組員が証言 
posted by 大翔 at 23:42 | 青森 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 裁判 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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