舞台はマンチェスター・ユナイテッドの本拠地、オールドトラフォード。清武は前半14分、相手ボールを奪うと、走り込むFW永井謙佑(23)に絶妙のクロス。永井のシュートがゴールを揺らした。スタンドで日の丸がはためく。その後も華麗なパスで次々に得点を演出。7万人を超える観客を魅了した。
柔らかいボールさばきや視野の広さ、的確な判断力。「この子は絶対に将来の日本代表のエースだ」。小学2年で入団した「明治北少年サッカークラブ」の総監督、新庄道臣(みちおみ)さん(67)は確信した。
才能を磨き上げたのは、新庄さんとともにクラブを指導していた清武の父、由光(よしみつ)さん(50)だった。
地元実業団チームに所属し、国体にも出場した由光さんの指導は“熱血”そのもの。練習場の照明が消えると、車のヘッドライトをつけてリフティングを課した。帰宅後は父子で長時間風呂につかった。「パスコースはどこにあったのか」「どのプレーを選択すべきだったか」。練習や試合の反省点を話し合った。
プレーだけではない。最も厳しく伝えたのは、サッカーに対する姿勢だった。
小学6年で主将として臨んだ全国大会。一緒にプレーしていた1つ年下の弟で、現在サガン鳥栖(とす)に所属するMF清武功暉(こうき)(21)への相手選手のラフプレーに反則が出なかったことに腹を立て、審判に暴言を吐いた。レッドカード。引き分けで試合を終えた帰り道で、こう告げられた。
「お前にはサッカーをやらせなければよかった」
清武は「いつも厳しく教えられてきたが、あれが一番きつかった」と振り返る。技術より大事なものがあると痛感し、自分に恥じぬプレーを愚直に続ける。
「父さん、母さん。どんな時も一番に応援してくれてありがとう」。6月まで所属したセレッソ大阪での最終戦後、清武は観客席で見守る両親らを前に、ピッチ上からこう感謝した。
移籍先のドイツ・ニュルンベルクでの背番号は由光さんが現役時に背負った「13」。「今の弘嗣のプレーは、昔の由光とダブる」。小学校時代の由光さんにサッカーを指導した重石(しげいし)祐将(ゆうしょう)さん(56)はロンドンの地で躍動する清武の姿を感慨深げに見守った。

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