1−2で米国に敗れた試合終了直後、ある選手は天を仰ぎ、ある選手はピッチに座り込んだ。号泣した宮間あやは大野忍に抱きかかえられた。しかし、数分後に表彰式に出席するために再びピッチに姿をみせた選手の顔には笑顔があふれる。金メダルを逃したことよりも、自分たちのサッカーを大舞台で披露できたことがうれしかった。
米国を相手に初めて内容で上回った。ワンバックの高さとモーガンのスピードにかけるロングボール攻撃に、粘り強い守備と華麗なポゼッションサッカーで対応した。
鋭いドリブルで何度もスタンドをわかせた川澄奈穂美は「ボールを支配できたし、得点を取れるという感覚はあった」と納得し、熊谷紗季も「去年のワールドカップ決勝はしのぐだけだったけど、きょうは米国のゴールにどんどん迫れた」と喜んだ。
初めて挑んだ五輪の決勝で、米国ほどふさわしい相手もなかなかいない。アテネ、北京の両五輪を連覇し、国際サッカー連盟(FIFA)ランクも堂々の1位。「最高の舞台で、最高の仲間とともに、最高の相手と戦えるのは今までになかった」と沢穂希も目を輝かせた一戦だった。
どれだけ走り回っても、どれだけ知恵を振り絞っても越えられない壁であり続けた。3月のアルガルベ杯で下したのが26度目の挑戦にして得た初勝利(W杯決勝はPK戦で記録は引き分け)。初めて米国と対戦してから8年がたつ安藤梢が「どうやったら勝てるんだろう」と途方に暮れていた相手が米国だった。
W杯決勝の雪辱を期す米国のロイドが「私たちこそがナンバーワンであると証明したい」と息巻く中、宮間あやは「1度負けたことで勝ちたいという思いが強いのかもしれない。でも私たちは長い歴史の中で20敗以上もしている。勝ちたいという思いは米国に負けない」と応じていた。
今年に入ってから4度目の対戦となる女子サッカー界の竜虎。激しいライバル関係にありながらモーガンは「憎悪や敵対心はなく、互いを尊敬し合っている」。先に決勝進出を決めていた熊谷紗季も、「やっぱり米国と決勝を戦いたい思いがあった」と再戦を楽しみにしていた。
やはり女王は強かった。「日本のペースになっていたけど、どうしても2点目を取れなかったのが力の差」と沢は潔く敗戦を受け入れた。絶対女王と互角に渡り合う確かな手応えとともにロンドンを後にする。
(奥山次郎)
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