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■匠の圭
17日朝にメルボルンに着いた。中央駅近くのスーパーに寄ると、地元紙が目に留まった。有力紙「エイジ」の1面トップに錦織圭の写真付き記事。「アジア男子で初めて4大大会決勝に進んだ25歳」は「母国で人気が沸騰」し、「その双肩に日本の期待がのしかかる」とある。雑誌の棚からは、米誌「タイム」の表紙になった錦織がクールな表情でこちらを見ている。
日本を発つ前、少々違和感を感じていた。全豪が近づくにつれ、目に付いたのが「4大大会で初優勝を目指す錦織」という表現。もちろん、昨年の全米が準優勝だから、その上は優勝しかない。ただ、テレビのスポーツコーナーなどを見ていて、期待が少々前のめりで「8強ぐらいは当然」といった空気を感じた。あまりに楽観すぎないか、と。
長年、男子テニス界の上位を独占するジョコビッチ(セルビア)、フェデラー(スイス)、ナダル(スペイン)の3強にマリー(英)を加えた「ビッグ4」以外で2009年以降に4大大会で優勝したのは3人。彼らが優勝した次の4大大会を振り返ると、09年全米のデルポトロ(アルゼンチン)は4回戦敗退、14年全豪のワウリンカ(スイス)は1回戦敗退。14年全米のチリッチ(クロアチア)は今回欠場。栄光を繰り返すのは容易ではない。
錦織が1回戦で当たるのは、世界ランキング67位のアルマグロ(スペイン)。今、世界5位の錦織と単純に比べると「格下」だが、2年前の全豪で8強の元世界9位。錦織も「シードでもおかしくない」と語る。
錦織本人はコート以外のことを「雑念」と言い切るし、受け流す「スルー力」もある。油断が忍び寄る余地がない対戦相手が、「吉」と出ると信じつつ。(編集委員・稲垣康介)
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テニスの全豪オープン開幕にあわせ、錦織圭を4大大会デビューの2008年ウィンブルドン選手権から取材している稲垣康介編集委員のコラム「匠(たくみ)の圭」を朝日新聞デジタルで始めます。そのショットの多彩さ、精度から「匠」を思わせる錦織の奮闘ぶりを、大会の開催地メルボルンから連日お届けします。
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